20011年8月3日、アムステルダムアレーナ
エドウィン・ファンデルサール公式引退記念試合
オランダサッカーを好きになったのは恐らく中学生の頃。オランダトリオというミランの3人が独特のリズムで相手を切り裂く姿に惚れ、アイスマンことデニスベルカンプ、伝説のサイドアタッカー・オーフェルマルス、またどのポジションでもこなせるフィリップコクーや変態的プレーでファンタスティックなゴールを決めるクライファートなど、オランダには独特すぎるプレイヤーが多く存在したため、オランダサッカーは見ていて本当に楽しかった。アヤックスを好きになったのもその頃。
そしてもちろんファンデルサール。彼はオランダが最も完成されたとされる98年のW杯でゴールを守った守護神。40歳にてマンチェスターユナイテッドでトップクラスの活躍をする姿には、近年本当に心を打たれていた。そんな彼がついに昨シーズンで引退。今日はその記念試合。先に挙げた選手たちも出場予定だった。
こんな日に限ってメトロがストライキでストップ…仕方なく切符を買って電車で向かったアレーナ。チケットはネットで公式ページから注文したもので、当日メインデスクで受け取るということだった。マンチェスターから来た人と偶然一緒になり、ユナイテッドの来期のにスナイデルは必要かという等討論をしならがチケットを受け取り、中へ。
なんと、メインスタンド真向いの、1階中央!サッカー観戦したことある人なら解るだろうが、いわゆる一番見やすい場所だ。これは正直期待していなかっただけに驚いた。この場所からオランダレジェンドを見られるなんて、想像しただけで鳥肌が立ってきた…。
最初はアヤックスのDチームとマンチェスターUのDチームの対戦。マンUのゴーリーはファンデルサールジュニアだ。しかしアヤックスのヤングチームは強い。こういうのを見てると、やはりクライフ伝承のオランダの教育システムというのは物凄いんだなと実感できる。
前後半あわせて40分程度の試合が終了した後、いよいよ伝説の一戦、アヤックス'95 vs オランダ代表'98の試合だ。
スタジアムが急に恐ろしく盛り上がる。アヤックスからはライカールト、オーフェルマルス、ライジハー、そしてオランダチームからはベルカンプ、先日引退したジオ、コクー、ヴィムヨンク、ホーイドンクなどの名選手の名が読み上げられる。監督も当時の監督ファンハールとヒディングという、まるでタイムスリップしたかのような組み合わせ。。。試合が開始してしばらくしても、魔法にかけられたような気分が抜けなかった。
試合は動かず前半を終了したが、後半開始数分後、ずっと左サイドで抜け出しをはかっていたオーフェルマルスがドリブルで2人をかわして切り込み、さらに一人をかわしゴールゲット。その瞬間、スタジアム全体が揺れた。大のオーフェルファンの私ももう喜びすぎてわけわかんなくなっていた。「オレはベルカンプとオーフェルが好きだ!」と席上で試合前から公言していたので、隣のおじさんも「良かったねー!」と。もう引退した自分の好きだった選手のゴールが生で見られるなんて、私にとっては奇跡に近い。
しかしこのオーフェルマルスという選手は凄い。フェアウェルマッチだというのに関係無しに、ずっと左サイド抜け出しを虎視眈々と狙い続け、隙あらばぶち抜いてシュートまで持っていくという、現役さながらのプレーぶり。確か前回のベルカンプかスタムの引退試合も、彼は完全本気モードだった気が…。
そして奇跡は更なる奇跡を。最終試合、アヤックス現役チームVSエドウィンドリーム選抜。このエドウィンチームの面子…ベルカンプ、ルーニー、カイト、ジオ、ギグス、ネビル、サハ…。そして監督はサーアレックスファーガソン。。。
オランダの選手の引退試合というのは、記念試合にも関わらず試合がヒートアップしていき、結局本気モードになることが多い。今回もその類。前半はガチガチの奪い合い。記念試合でこんな重い試合すんのか!とか一瞬思ったが、ルーニーの全線からのプレッシャーや、ジオとビディッチのやり取りを見ていると、本気さがにじみ出ており見ているほうも熱が入ってくる。
試合は1-1で後半半ば、このまま終わって行くのかと思った矢先、奇跡が起こった。中盤でキープし、ためを作ったギグスから右サイドベルカンプへ。ルーニーがゴール前で楔になり戻したボールをベルカンプが振りぬいた。
「いつかどこかで再びあなたのプレーに魅せられるのを夢に、これからあなたの後輩達を応援し続けます。20年間、本当にお疲れ様でした。」2006年、ベルカンプが引退したときの私の当時のブログ記事である。書かれているとおり、私にとって夢だった。引退した選手のゴールを見るなんて、到底叶わぬ夢。しかし、ベルカンプという天才はそんな不可能をも可能にしてくれた。引退して5年、2試合出て疲れきっているはずである。しかし友人の引退試合にはしっかり華を添えるという…やはり天才は天才なんだなぁと、感動を超えた感心がそこにあった。
ベルカンプの話ばかりになってしまったが、この日2試合に出場し2試合とも勝利したファンデルサール。最後は引退セレモニー、息子のPKをきっちりセーブして終了した。場内は花火があがり、家族に囲まれスタジアムを一周。なんとも感動的なフィナーレ。この日は私も全身アヤックスとオランダ代表で望んだのだが、アヤックスサポーターに声をかけられたり、試合を解説してもらったり、一緒に写真を撮ったり本当に色々楽しむことが出来た。中には40年前アヤックスのAチームにいたというおじさんもいた。彼は本当に詳しく、オランダサッカーについて色々と語ることが出来た。改めて思う、サッカーは凄い。国境も何も関係なく、そのチーム、選手を好きなだけで一つ仲間意識が持てる。そしてこの憧れのアムスアレーナでそんな経験をさせてくれたファンデルサールに、本当に心から感謝。彼は長い長い現役生活を終えたが、彼の場合は既に息子がマンチェスターUにいるので、次はジュニアを応援したいと思う。本当に偉大なゴーリーだったファンデルサール、ファーガソンが言うように、少し休んでまた指導者として戻ってきてくれたら嬉しい限りである。ありがとう、そしてお疲れ様、ファンデルサール!
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